マウンテンバイクで森を守る!トロッコ道と林業がつなぐ、乗鞍高原の脱炭素トレイルづくり

SHARE / シェア

マウンテンバイクと林業、そして脱炭素⁉︎

一見、関係のなさそうなこの3つのキーワードが、いま長野県・乗鞍高原でつながり始めています。
のりくらコミュニティマウンテンバイクトレイルズ(NCMT)では、「トロッコ道」と呼ばれる林業由来のルートを活用し、環境負荷を抑えた持続可能なマウンテンバイクトレづくりを進めています。


トロッコ道跡 枕木が見える

現在トレイルやサイクリングロードの一部に利用されている「トロッコ道」は、1950〜60年代に林業が盛んだった時代、伐採した木材を運搬するために使われていた林業鉄道の跡地です。
線路が敷かれていたため、斜度は緩く(5〜7%以下)設計されており、マウンテンバイクでの走行にも最適。スピードを抑えやすく、急ブレーキや路面の損傷を防ぎながら安全に走行できます。


トレイルが荒れる原因と対策

トレイルが荒れる主な原因は「水の流れ」と「過度な利用」。
特に雨天後は、柔らかくなった土が削れやすく、雨水が集中すると一気に表土が流出してしまいます。
そこで、水の流れをコントロールするトレイル設計が重要になります。
緩やかな斜度に調整し、雨水が一点に集まらないようにルートを設計することで、トレイルが早く乾き、長期的に良好な状態を維持できます。

水の流れをコントロールするトレイル整備

トレイルの斜度を緩くし、雨水が流れるルートをコントロールして1箇所に集中して溜まらないようにすることで、降雨後にトレイルが早く乾き、より持続的に良いコンディションを維持することが可能になります。

マウンテンバイクと脱炭素の関係性⁉︎

現在、乗鞍高原ではゼロカーボンパークの施策の一つとして「木の駅プロジェクト」が進められています。これは、景観改善のための間伐(修景伐採)で得た木材を地域内で薪として活用し、暖房などの化石燃料使用を減らす取り組みです。

実は、薪ストーブ1台の使用でハイブリッド車5台分のCO₂削減効果があるという研究も。
地域の森を手入れしながら、CO₂排出削減にもつながる、まさに“循環型のエコ活動”です。

間伐材の切り出し

間伐作業には重機が使われますが、急斜面では動けないため、緩やかな傾斜でルートを開きます。

重機が登れる斜度

間伐後には日の光がさす、開けた森と道が残ります。森に光が入ると、残された木々はより健康に、幹も太く生育します。加えて、光が地表に届くようになり、下層植生の発達が促進され森林の持つ多面的機能が増進します。

その「作業道」が、後にマウンテンバイクトレイルとして再利用できるのです。
幅2m前後・緩い勾配という特性から、整備すれば初心者や親子でも楽しめるトレイルになります。

作業道跡

間伐によって光が差し込むようになった森は、木々が健康に成長し、下層植生も育ち、生態系が豊かになります。
森林保全と観光が共存する「観光林業」という新しい取り組みがここにあります。

作業道を整備してマウンテンバイクで走りやすい路面に改修
なるべく斜度を減らして、初心者でも走りやすく。

今回のプロジェクトでは、観光センター近くのエリアで2本のトレイルを整備中です。
全長はそれぞれ約700m。サイクリングロードとも接続し、ループで楽しめる設計に。
小学1年生くらいの子どもでも走れる初心者向けのコースとして整備を進めています。

昨年秋から工事が始まり、完成済みの部分はツアーで試験運用中。
2026年春には全体完成を予定しています。

ただ遊ぶだけでないマウンテンバイク

マウンテンバイクで脱炭素に貢献

マウンテンバイクで走ることが、森を守り、地域を支え、そして脱炭素にもつながる。
のりくらコミュニティマウンテンバイクトレイルズの取り組みは、単なるアウトドアスポーツを超えた、環境と地域が共に育つプロジェクトです。

SHARE / シェア

LATEST / 新着記事